カンガは、東アフリカ、ケニアやタンザニアで愛用されているパネル状の布で一枚布としてデザインが完成されているプリント布です。
一枚一枚にスワヒリ語で文言「カンガセイイング」がプリントされているのが大きな特徴です。
カンガは、ヨーロッパから東アフリカに流入したスカーフを縫い合わせた「レソ」から発展したものと考えられます。
また、19世紀後半には、レソの一種として流通したインドの絞り染めを模した布などもありましたが、20世紀以降、ヨーロッパからの輸入の増加やスワヒリ社会の変化とともに、スワヒリ地方に暮らす女性の着用布「カンガ」として広まっていきました。
ただ、東アフリカ沿岸部、スワヒリの歴史を考えますと、すでに16世紀には女性たちが豪華な布を纏っていたという記録がありますから、より厳格な巻き布のルーツということであれば、東アフリカ沿岸にイスラームが伝わった時代にさかのぼらなくてはいけないでしょう。
カンガは、20世紀になると、沿岸部から内陸部へと広まっていきます。
内陸部では、かつては牛の革をなめしたものなどを纏っていましたがキリスト教の普及によって、無漂白の綿布を纏うようになり、その後カンガを纏うようになりました。
今では、カンガは、エスニックグループの枠を超えた東アフリカの女性としてのアイデンティティを示すものと考えてもよいでしょう。
ワックスプリントは、もともとは西アフリカ向けにヨーロッパで作られた布で、生地の両面に樹脂をつけて防染し浸染させてから、その後、樹脂などを落とし、再度、木版ブロックやローラー機械などで染色する方法で作られてきました。
模様は、一枚布として完成されているカンガとは異なり、連続柄のいわゆる「生地」です。
この布は、もともとインドネシア独特のろうけつ染めであるバティックあるいは模倣バティックがそのルーツといわれていますが、インドネシアのバティックと対峙するアフリカ向けの布として「ワックスプリント」という名称で、長い間、研究・生産・流通してきており、「ワックスプリント」布独特の世界観が築き上げられてきています。
最近、日本国内では「アフリカンバティック」と呼ばれているようですが、これは誤名です。正しくは「ワックスプリント」で、昔も今もメーカーは「ワックスプリント」という名称で作り、世界的に流通しています。
また、キテンゲは東アフリカでの連続柄プリント布の呼び名です。タンザニアでは、ロータリースクリーンプリントによる捺染で製作されています。プリント方法や品質の点では、ワックスプリントの方が断然優れています。
アフリカのプリント布ということでテキスタイルの分類からすれば、カンガもワックスプリントもアフリカンプリントと総称される場合もあります。
カンガとワックスプリントでは、そのルーツ、歴史、発展過程、デザイン、着用スタイルもまったく異なりますので、この二つは分けて捉えた方が良いと思われます。
カンガやアフリカンプリント布は、時に版ずれやいびつな形になっている場合があります。
もちろん品質チェックを行っておりますが、当方の許容範囲とお客様の許容範囲が異なる場合もございますので、ご理解ご了承ください。
また、ワックスプリントでは、わざと版ずれを起こして味を出す場合も多くみられます。
最近、アフリカのプリント布をすべて「カンガ」である、と認識しておられる方が多いように見受けられます。
アフリカンプリント布が、今のように注目を集める以前から、当方ではカンガをPRしてきましたので、若干の誤解が生まれているかもしれません。
上述のように、カンガは東アフリカ独自の布文化で、デザイン構成や歴史、文化的背景も他のアフリカのプリント布とは異なります。
どうぞ混同なきよう、ご注意いただければ幸いです。